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”I can't beat it.” manchester by the sea


”I can't beat it.”


厳しい潮流に逆らうかのように海辺の町でただひたすらもがき続ける主人公がいる。主人公の経験と悲しみは、安易に想像できない。父の死をあっけらかんと乗り越えて充実した生活を送る甥っ子との対話がある。傷ついた主人公と甥の二人を乗せたボートは、ただひたすらゆっくりと海を進んでいく。鬱な主人公と彼の周りに配置された人々に流れる時間の相違が映画のリズムの肝になっていた。人々に無言の応対を続けるケイシーアフレックを見て、時に魔が差したような笑いがこみ上げる時もあった。 死の宣告をしている時に、良い病気ってなんだと医者が聞かれたり、救急隊員が救急車に担架を載せようとするとき中々入らなかったり、葬儀場でケータイ電話が鳴り出したり、悲しい場面に含まれていた苦笑いを誘う細かな演出が私に主人公を見守る気持ちを抱かせてくれた。寒々しい景色が続く映画でありながら、不思議なユーモアに包まれた他人の気持ちに寄り添うとても暖かい映画だった。

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