
古美術商人
Painted by Picasso マモルとレイコは、南方にある健やかな島国、マラガで慎ましく生活をしていた。マモルは、レストランで働き、妊婦のレイコは、家で働いていた。マモルは、家で絵を描くのが好きだったが、それは一個人の趣味の範囲にしかすぎなかった。アートが盛んなこの街にマモルが移住して5年、レイコと一緒に住み始めて2年が経つ頃だった。そんなある日、マモルが仕事からアパートに帰ると、隣の部屋の住人がアパートのドアの前で待っていた。隣人とは普段笑顔で挨拶する程度の間柄だったが、お互い同じ地方出身の人種ということで親近感を持っていた。男は、いつものように気前のいい声で挨拶し、ある預かりものをマモルに頼んだ。マモルに預かってほしいものとは、ペルシャ絨毯だった。男は、高価そうなペルシャ絨毯をマモルの部屋の前に持ってきた。「少しの間だけ預かってくれないか。お礼はするから」と気前の良い調子でマモルに隣人は頼んだ。物珍しい気持ちとこの不思議なお願いに対して好奇心を抱きながらマモルは承諾した。 その素敵な絨毯は、慎ましかった部屋をとても魅力的なものにした。